とてつもなく広い部屋に、床を埋め尽くすほどの大量の絵が置いてある。ここにはこの世に存在し得る全ての絵が一堂に会している。「全ての絵」というのは、単に完成品のものだけでなく、まだ描いている途中の物や、まだ何も描かれていない白紙のキャンバスも含んでいる。正確に言えば、この部屋にあるのは「全ての絵の描きはじめから完成までの、全ての時刻におけるスナップショット」だ。

これらの絵は無秩序に配置されているわけではなく、似ている絵のペアは近くに配置されている。この部屋にある絵Aの周りには、これに1ストローク描き加えた絵A'や、消しゴムで1ストローク消した絵A''などが置かれている。

自分が問題にしているのは、自分の絵がこの部屋の中のどこに位置づけられているのかだ。

どのように近傍を辿っていけば目的の絵にたどり着けるのか?

自分の描き方と、絵師や画家の描き方を比べてみて分かったことがある。自分はゴールの絵に向かって、この部屋の中を一直線に移動しようとする。しかし上級者は回り道をしようとする。一見自分のやり方の方が手っ取り早いように見えるが、実際は回り道に見えるやり方の方が効率的のようだ。

ここまで書いてきてふと思ったのが、そもそも自分はゴールとなる絵がどんなものなのかもよく分かっていないということだ。だとすると、ゴールに向かって動いているという認識はおかしい。